服飾資材製造・卸産業の海外競争について

服飾資材製造・卸産業の海外競争とアパレル卸商の実態

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服飾の資材を中国での生産にいち早くスタートさせ、大量生産できる体制を築いてきたことからこれらの業界の成長は著しく見えました。しかし、日本以外の国の同業者も中国に次々と進出し、服飾資材関連のビジネスも海外諸国との戦いという現状にさらされています。

 

 

洋服は、生地だけでなく、一つの洋服を完成させるためには、縫い糸、ボタン、ファスナー、ネームタグ、芯地(ジャケットやネクタイなどの生地の内側にある型崩れを防ぐもの)、あて布など様々な周辺資材が必要になってきます。アパレルメーカーの製品づくりを支えているのが、これらを製造する服飾資材業界と呼ばれる分野です。国内には、服飾資材の生産や卸に携わる多くあります。

 

これらの企業の多くは、1990年代の初めから中国に工場を開き、卸しは中国の各地方に営業所を開き、日系アパレルメーカーに対して積極的に売り込んできました。自社で一貫して製造を管理するSPAなどの取り組みが盛んになるにつれて、原料や糸などを日本から持ち込むことでコストダウンを図り、高品質な製品を作り日本に納入できるように取り組んできました。

 

服飾資材製造・卸産業の海外競争について

 

しかし、徐々に台湾や香港などの服飾資材メーカーや中国国内メーカーが力をつけていて、日本メーカーに負けじと販売にも力を入れ始めたのです。

 

そこで国内服飾資材メーカーがしたことは、以下の生き残り策です。

 

  • 日系のアパレルメーカーだけでなく、中国国内のアパレルや中国に生産拠点を移している欧米のアパレルメーカーとの取組みを始めた。
  • アイテムのバリエーションを増やした。
  • 短納期を可能にする生産システムの構築。
  • 大量に商品を納入できるようにした。

 

海外企業のプレッシャーがいい刺激となり、国内服飾資材メーカーはそれに競争し、グローバルな経営システムを構築せざるを得なくなり、進展しました。成長し続けるためには、こうした外的圧力をマイナスと捉えずに、逆にプラスとして考え、前進して姿勢が必要という証です。

 

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アパレル卸商の実態と特徴について

 

日本のアパレル業界で、最も企業の数が多いのが「アパレル卸商」であり、「アパレルメーカー」と言われている企業もこのアパレル卸商に入ります。アパレル卸商も近年、急激な市場が縮小したこととと輸入が増えたことにより、事業の再構築が迫られているのです。

 

日本のアパレル卸商は下記のとおり、7種類の企業タイプに分けられます。

 

  1. 中央卸商(多くのアパレルメーカーがこれに含まれる)
  2. 地方卸商(掛売卸と現金卸)
  3. 産地卸商(産元卸商)
  4. 海外メーカーの代理店
  5. 輸入商社
  6. 金融商社(いわゆるバッタ屋)
  7. ブローカー

 

これらがそれぞれの役割を持ち、日本のアパレル流通が成り立っています。アパレル卸を機能別に分類すると、製造卸と製品卸に分けられますが、現在国内で勢力を持っているのは、ほとんどが製造卸です。

 

製造卸の形態は、商品企画を自社で行い、生地や副資材をメーカーから購入し、商品化したものを小売業へ販売するというものです。しかし、最近では、全国の専門店と言われる基本流通の経路が不振になってきたため、製造卸と小売の両方を自社でやるSPA型の企業が増えてきています。そのため、コストを下げ、売上を確保するためには、自社の直営店で自社商品を販売する形態が良いとこれが一般的になっています。

 

 

今後も自社のリスクで商品を企画、製造、販売していく形が急速に進んでいくことが予測されます。しかし、同じターゲットに向けて類似の商品を販売していくような、オリジナリティのない会社は生き残ることはできないでしょう。

 

いまだに世界に通用するような国産ブランドがないこともその証です。世界を視野に据えて、新ブランドを開発するその力こそが、今、国内のアパレル業界に求められている条件なのです。



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