日本のテキスタイル産業は、世界トップクラス

日本のテキスタイル産業は、世界トップクラス

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欧米、特にヨーロッパのアパレルから非常に高い評価を受けているのが、日本のテキスタイル(繊維、繊維素材)の開発力や技術力です。しかし、一方で複合素材の一般化によって従来の「産地」という概念は崩れ、今窮地を迎えている企業が多い業界というのも事実です。

 

 

国内のテキスタイル産地は、「テキスタイル」の開発と供給という点で長らくアパレル業界を支えてきました。扱っている素材や品種によって課題は異なるものの、なぜこのテキスタイル産地が存亡の危機を迎えているかというと、テキスタイル調達が国内ではなく海外へと移ったことが原因として挙げられます。

 

国内の産地は、これまで長い間、素材品種ごとに紡績・織布・染色と明確な役割分担のもとで仕事が進み、守られてきた産業でした。それは、ウールの尾州、綿の浜松、西脇、泉州、新潟、合繊の北陸、シルク、合繊ジャガードの桐生、米沢などに挙げられます。

 

日本のテキスタイル産業は、世界トップクラス

 

中でも、最も素材別の分業が進んでいるのが、染色整理加工業と言われる精練,漂白,染色及び整理仕上げ,その他の処理を行う業種です。しかし、アパレルの店頭では、店頭販売の直前になるべく出来たばかりの新しい商品を少量のロットで発注するという形態が求められるようになってきたのです。

 

そこでテキスタイル産業は、コストを抑えつつ、スピード感のあるテキスタイル納入することを求められ、それができなければ適正価格で商品を販売することが不可能になってきたのです。こうした動きに対応できなくなった多くの産地は、どうしようもなくなり身動きができない状態に陥ったのです。

 

このままでは、日本の多くの産地がつぶれてしまうと、国内の産地企業が一体化しました。そして、素材開発や効率的な販売で連携しようという取り組みを始めたのです。これが総合繊維見本市の「JFWジャパン・クリエーション」と呼ばれるものです。

 

このような動きがきっかけとなり、国内のテキスタイルメーカーの技術力が海外からも注目され、欧米企業からの取引きも確実に増えてきています。

 

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服地卸と染色加工業の厳しい現状について

 

洋服を仕立てるための布地を卸す「服地卸」や「染色加工」という役割をしてきた服地卸染色加工業界も厳しい経営環境に置かれています。中間流通のカット、短サイクル化の流れなどが本格化してきたのです。

 

 

服地卸の仕事は、服地コンバータ(自らリスクをもって服地を買い付け、販売する生地問屋)とも言われるようにテキスタイル産地に素材の生産を依頼し、それを変換するという機能を持っています。テキスタイルとメーカーをつなぐ役割をもっていました。

 

ところが、期中発注、短納期などが進み、在庫リスクの問題、テキスタイル単価の下落などで服地卸の売上、粗利率はだんだん減っているというのが最近の状況です。このような中でどのような企業が伸びているのでしょうか。

 

それは、特定素材などを自社のリスクで持つ企業、小ロットで即納できる企業、技術力や加工ノウハウに優れた国内のテキスタイル産地との取組みを強化し、アパレルブランドの高付加価値戦略をフォローする企業などです。

 

 

また、染色加工業も日本の誇る産業の一つであったものの同じく他との差別化や、短サイクルに対応できない企業は消えている状況に追い込まれています。

 

染色の方法としては、合繊の原料段階で色を付ける「原料着色」や「糸染色」、生地段階での染色、製品に仕上げてから染める「製品染め」といった様々なものがあります。これらの染色技術は、繊維素材の差別化をしたり、高い付加価値をつけるためにはなくてはならない技術です。

 

 

服地卸、染色加工業ともに、世界に誇るべき高い技術を持ち合わせています。しかし、受け身的な仕事の進め方が定着してきたために、厳しい経営環境に立たされている企業が多い業種です。しかし、同じ業界の中でも、SPA企業との取組みをいち早く始め、付加価値を販売する事業形態に変化させた企業は伸びてきています。

 

世界を視点に捉えたモノづくりを前提に、情報化と素材開発に力を入れていくことができる企業がこの業界で今後伸びていくでしょう。



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