アパレル業界独特の商慣行について

アパレル業界独特の商慣行について

このエントリーをはてなブックマークに追加  

日本の「アパレル流通」の世界は、独自の商慣行を作り、日本流のやり方でこれまで成長してきました。しかし、メーカーや小売の両者にとって最も良いとされるやり方を追求してきたものの、だんだんこれが互いに寄りかかって成長できない構造へと変わってきたのです。

 

アパレル業界独特の商慣行について

 

アパレル業界では、契約というものがないのが通例です。契約がないというよりも、約束をしたものがなくなってしまったりと、お互いの信頼感だけで成り立ってきたものが多いのです。しかし、これからの社会で決めたことが簡単に覆ってしまうような契約では、両者の関係は長続きしないでしょう。

 

「繊維取引近代化推進協議会」(繊維産業の成長・発展のために、生活産業局長の私的諮問機関として設置された、アパレル業界の取引改善に対して様々な提言をしている機関)の調査によると、契約書を交わす取引は、売買契約で約3割、委託契約で約5割程度との調査結果があります。

 

 

返品、値引き、その他の対応は、口頭のみの約束で済まされてしまうようなことも、日常茶飯事という状況なのです。このようなアパレル業界特有の契約の仕組みが、時代にそぐわない「商慣行」と言われる代表的な例です。

 

では、なぜこのようなやり方が、アパレル業界で続いてきたのか考えてみましょう。

 

@戦後
日本のアパレル業界は急激な成長を遂げる

 

A成長期
「大量の商品を店頭に投入する」やり方が主流。メーカーが売上を上げるためにはできるだけたくさんの在庫を小売店頭においてもらうことが必要だったため。

 

Bその後
「委託仕入」というやり方が日本の大手では一般化した。それは、小売側はメーカーの売りたい在庫を全て買い取るのは負担が大きいので、たくさんの在庫を仕入れて、決済日までに売れたものは代金を支払い、売れ残ったものはメーカーに返品するという方法

 

スポンサーリンク

 

このようなやり方により、これまでの日本の商慣行を作ってきました。契約書を交わすものの、確実に期日通りに決済しているかと言えば、予定通りに売上が出ないと支払期日を守らない業者が出ました。

 

また、様々な商品を注文しても、箱を開けずにそのまま返品するような事態も起こりました。メーカーはこのような契約を利用して、とにかく商品を売ってもらいたくて、一方的に小売りに送り続けるやり方が当たり前になったのです。

 

 

メーカー側は、また、期末が近づくと営業マンも売上を上げるために「残ったら返品していただければ。」と言って、大量に商品を送りました。このような関係は、メーカーと小売は存在しますが、そこにお客様は存在しません。

 

お客様不在で、正当な、正しい経営、協力関係とは言えないでしょう。日本の商慣行が築いてきた仕組みは、あくまでメーカーと小売の売上を確保するための取引構造であり、お客様を置いた取引体系ではないというのが、一番の問題点なのです。

 

 

そのため、これからのアパレル業界が成長していくためには、まずはお客様を全ての中心に置き、考えていくことが重要です。QR(POSシステムを用いて、販売情報を迅速に生産に反映させる方式)やSCM(商品の生産・物流・販売までの業務を管理する手法)の開発も、すべてはお客様のためにどのように発展させることができるかということを考えながら実行していくことが必要不可欠なのです。



このエントリーをはてなブックマークに追加